
デはボクの名前も決まったところデ、どうやってキミの”生きづらさ”を克服するか語っていくとしようカ
……ちょっと待ってくれ。ここまでの情報を整理させてくれ、正直まだ頭が状況についていけてない……
……えぇと、どうしてこの状況になったんだったか……。
確か……仕事を終えてアパートに帰ってくるまでは今まで通りだったが、玄関を開けたら見ず知らずのコイツがいた。
半ばパニックを起こしながら状況説明を求めたのだが……その内容が要を得ないというか、現実離れしているというか……。
ふム。デは何かわからないコトがあるなら何でも質問するといイ
……まずはアンタが何者か、についてだな。アンタは人間ではなく思念体、って話だけど……?
コイツの説明によれば────「思念」とは生物の感情や思考から生じるエネルギー、らしい。
思念は目に見えないだけで世界のそこかしこに存在している。そして思念が集まってできた存在がコイツ────ということらしい。
話だけでは到底信じられないが……ぼくの目の前でフワフワと浮いている光景を見れば、少なくとも「人間ではない」という主張は受け入れざるを得ない。
説明されてもいまいちピンと来ないんだけど……とりあえず「幽霊みたいなもの」って認識でいいか?
ウ~ん、厳密には幽霊とは違うのだけど……ひとまずはそういう認識でいいヨ。モう少し付け加えるならば「”キミにしか認識できない”霊(スピリチュアル)的存在」かナ
……ぼくにしか認識できない、ねぇ……
「ぼくにしか認識できない」────というのはその通り、ヤツの姿はぼくにしか見えずヤツの声もぼく以外には聞こえない。
というのも先ほど試しにコイツをスマホで動画撮影してみた。結果、その映像にはこの部屋の風景とぼくの声以外収まっていなかった。
もちろんというか、物質的な存在もない。コイツの体に触れようとしたが、手応えどころか質感すらまったくなかった。
トいうカせっかくキミが『生方コト』という名前をくれたのだから「アンタ」ではなく名前で呼んでおくれヨ
『生方(うぶかた)コト』というのは、ぼくがコイツにつけた名前だ。
『生方』は、コイツとの会話でやけに「生き方」やら「生きる」といったワードが頻出するため。『コト』とは、なんだか話し方が人口音声のようにカタコトっぽいから。
「せっかく姿形を得たのだから、なにか名前が欲しい」との要望を受け、即興で考えたのだが────名付けてからネーミングセンスの貧弱さが恥ずかしくなる。
それじゃあ、コト。アンタがこの部屋に来た理由だけど……
ボクがこの部屋にやって来た理由ハさっきも言った通り「キミの”生きづらさ”に引き寄せられたから」だネ
……さっきからその「生きづらさ」ってのは、何なんだ?
モっとわかりやすく言うなラ「人生の問題に悩み苦しんでいる状態」を指す言葉だネ
……人生の問題に悩み苦しんでいる……?
- 人付き合いが苦手。他人に気を遣いすぎて疲れてしまう
- 他人の視線や評価が怖い。誰かに悪く思われていないか、不安で仕方ない
- 他人の言動にイラつきやすい。ほんの小さなコトでもカッとなる、怒鳴ってしまう
- 他人を心配しすぎる。他人の問題に関わりすぎてしまう
- 周囲に振り回されやすい。いつも周囲の反応や空気が気になって自分の意見を主張できない
- つらい環境や嫌なコト、苦手な相手から逃げてはいけないと思う
- 問題が起きると、すべて自分が悪いと考えてしまう
- ひどい相手から離れられない。関わりたくないのに付き合いを断てない相手がいる
- 過去の嫌な出来事がしばしば思い出され、その度に悲しくなったり苦しくなったりする
- 他人の強い感情に影響を受けやすい。泣いている人を見ると涙が出てくる、怒っている人を見てイライラしたりする
- 人が怖いと感じる。人との関わりはできるだけ避けたい
- 過去の出来事に関連して恥や罪悪感、自責の念を感じることがある
- 急に原因不明の不安感や恐怖感に襲われるコトが多々ある
- 急に気分が落ち込んで何もしたくなくなる、何もかもが面倒くさくなるコトが多々ある
- 急に原因不明の怒りが湧く、無性に腹が立って他人やモノに当たってしまうコトが多々ある
- 将来に不安や焦りを感じる。このままでいいと思えない
- 責任を負うのが怖い。人から何かを頼まれたり、任されたりするのが苦手
- 自分が成長している気がしない、周りに比べて自分は幼く未熟だと感じる
- 仕事などで同じミスをよく繰り返す。ミスの再発を防ぎたいが何をすればいいかわからない
- 落ち着いてコツコツと成果を積み上げるのが苦手
- 「自分は何が好きなのか?」「自分は何をしたいのか?」が自分でもわからない
- 自分が何を考えているのか、自分でもよくわからなくなってしまうことがある
- 感情表現が苦手、自分が思っていることをうまく表現できない
- 「自分はおかしい」「自分はダメな人間だ」「自分には価値がない」と感じる
- 問題が起こったとき、まず「自分がすべての原因だ」と考えてしまう
- 自分を少し離れたところから見ている感覚がある
- 自分だけが世界から切り離されている、取り残されている感覚に陥るコトがある
- 世の中や人生に虚しさを感じるコトがある
- 物事が積み上がっていくことを信頼できない(あるとき不意に壊されてしまう、と感じる)
- 「何をしてもうまくいかない、何をしてもムダだ」と感じる
- のんびりするのが苦手。何もしていないとソワソワして落ち着かない
「人生の問題」というのハ、例えばこういったモノだネ。ドうかナ?キミはこういった問題に悩んだり苦しんだリしていないかイ?
……まったくないとは言わないけど……それが?
ソれが”生きづらさ”を抱えていルというコト。ソしてキミが”生きづらさ”を抱えている限り……ボクはこの部屋から離れられなイ
なんでも説明によれば、この部屋にはぼくの「生きづらさの気配」とやらが充満しているらしい。
そしてコイツはその「生きづらさの気配」とやらに引き寄せられて、今もなおこの部屋から離れられないのだという。
実際ヤツは何度も玄関から出て行こうとして見せたが、まるで見えない壁が存在するかのように行く手を阻まれていた。
……それで、コトがこの部屋から出ていくには、ぼくがその「生きづらさ」とやらを克服しなければならない……と
ソの通リ。キミが”生きづらさ”を克服したなら、この部屋から発せられているボクを引き付ける力も弱まってココから離れられるようになるだろウ
そこまではなんとなくは理解できた。だけど「生きづらさを克服しろ」と言われても、どうすれば良い?
結論だけ先に言うなら、生き方をカタづける必要があル
………………生き方を、かたづける……?
と、いきなりそんなコトを言われても意味不明だろウ。なので”生きづらさ”の克服について、順を追って説明するとしよウ
